毎日新聞の日曜版一面に掲載された「『貧困の連鎖』断ち切る力を」という記事を読み、深く心を動かされた。
記事は、大阪市西成区にある大阪府立西成高校の校長・山田勝治先生の取り組みを紹介したものである。経済的な困難や家庭環境の問題、不登校経験、外国ルーツなど、さまざまな背景を持つ生徒たちに寄り添う教育の現場が描かれていた。
その中で特に印象に残ったのが、卒業生に向けた山田校長の言葉である。
「あなたたちは傷ついたことがあるからこそ、人の痛みが分かる」
そして、
「人生は進むだけでは得ることのできない『宝物』を持っている」
という言葉にも強く共感した。
私たちは時として、学歴や職歴、経済状況などの「結果」だけで人を見てしまう。しかし、一人ひとりの人生には、その人にしか分からない葛藤や努力があり、そこから生まれる優しさや強さがある。
もちろん、環境が人生に与える影響は決して小さくない。
むしろ、この記事はその現実を真正面から伝えている。だからこそ、私は感動したのである。
なぜなら、厳しい環境の中にいる子どもたちの可能性を信じ続ける大人たちの存在が描かれていたからだ。
校長の山田先生は、卒業式のたびに涙すると語る。
それは単なる学校行事への感慨ではなく、一人ひとりの生徒がそれぞれの事情や困難を抱えながらも卒業の日を迎えたことへの敬意なのだろう。
この記事を読みながら、私は自分の専門である事業承継について考えた。
事業承継もまた、単に会社や財産を引き継ぐ手続きではない。
創業者や経営者が積み重ねてきた思い、地域への貢献、従業員の生活、そして未来への希望を次世代へつないでいく営みである。
西成高校が向き合っているのは「貧困の連鎖」であり、事業承継が向き合っているのは「廃業の連鎖」や「地域衰退の連鎖」かもしれない。
対象は異なっても、その根底には共通するものがあるように思う。
それは、人の可能性を信じること。
そして、その人が自らの力で次の一歩を踏み出せるよう支えることである。
日曜日の朝、一面の記事から改めて教えられた。
人生は環境だけで説明できるほど単純ではない。
困難な状況に置かれたとしても、その人の中に眠る可能性まで失われるわけではない。
だからこそ、その可能性を信じ、支え続ける大人の存在が社会には必要なのだと思う。
今回の記事は、そんな当たり前でありながら忘れがちなことを思い出させてくれる、心温まる内容だった。
事業承継士® 今井 光
Emerald View Vol.30 🍀

