末川博先生の教え

コラム

権利濫用の理論を発表し、長年、岩波六法の編纂を手掛けた、民法学者・末川博先生。

末川博先生は、立命館大学法学部講義概要の冒頭の『法学を学ぶ意味と価値』の中で、これから学問を志す若者たちに向けて、時代を超えて色褪せない本質的なメッセージを遺している。

その教えのエッセンスを、現代の視点から3つのポイントに絞って振り返る。

1. 「いかに学ぶか」より「何のために学ぶか」

末川先生は、法学における「技術(いかに学ぶか)」と「目的(何のために学ぶか)」の両面性の重要性を説いた。

これまでの法学は、条文をどう解釈するかという技術面ばかりが重視され、その本質的な目的が軽視されがちであったと指摘する。単に与えられた知識を丸暗記するのではなく、学問に対する情熱と真剣な態度を持ち、「なぜこれを学ぶのか」という目的意識を忘れないことこそが、大学での学びの原点である。

2. 社会の現実と、法のダイナミズム

法は決して、机の上の不変のルールではない。

私たちの日常生活や社会現象のなかに生きているものである。特に戦後の日本においては、新憲法が「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を打ち出したことで、社会のあり方が大きく転換した。

現代の法は、政治や経済といった社会のダイナミックな実態と深く結びついており、これらを切り離して考えることはできないと先生は説く。

3. 良心的な正義観と、世界の平和への貢献

法学を学ぶ本当の価値は、既存の法をそのまま受け入れることではなく、批判的な態度を持って観察し、その奥にある真実を追究することにある。

そうして培われた「良心的な正義観」や物事の正しい判断基準は、生涯にわたる強固な人生観・世界観の基礎となる。それは単なる自己のための学問にとどまらず、「国民の自由と権利を擁護し、人類の幸福と世界の平和に貢献する」という大きな抱負へとつながっているのである。

末川先生が遺した「学問の上に立って学問を通して人間をつくろう」という言葉。私たちは今、激動の時代を生きるなかで、単なるテクニックや効率性ばかりを追い求めてはいないだろうか。

物事の本質を見定め、社会に貢献するための「軸」を育てること――それこそが、今改めて私たちが受け継ぐべき末川先生の教えの本質なのである。

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