代替わりのガバナンス――なぜ先代の「古参側近」は共に退くべきなのか

コラム

組織における代表交代(代替わり)の局面では、先代の右腕として組織を支えてきた「古参側近」もまた、先代とタイミングを合わせて退くことが望ましいケースが多々あります。これは、事業承継や組織承継を円滑に進めるための、極めて重要なガバナンス設計(スキーム)の一つです。

この組織ダイナミクスの難しさを、見事に描いているエンターテインメント作品があります。日本の大ヒット任侠ドラマ『日本統一』です。

『日本統一』にみる、側近残留が招く組織の軋轢

作中では、会長交代の際、先代(初代)は一線を退いたものの、初代時代からの古参側近が二代目体制になっても組織に残留しました。その結果、新体制の内部に深刻な軋轢が生じ、やがて組織を揺るがす大抗争へと発展していくことになります。

もともと、二代目と初代の古参側近との関係は良好ではありませんでした。新体制のもとで冷遇された古参側近に対し、二代目側はさらに決定的な一手を下します。その古参側近の「部下」を本家直参へと引き上げ、かつてのボスよりも上位のポジションに据えたのです。

これが決定的な引き金となり、プライドを傷つけられた古参側近は最終的に組織を脱退、最大の対立勢力となって牙をむくことになります。

「もし、代替わりの時点で、初代とともに古参側近も綺麗に退いていれば、ここまでの悲劇は防げたのではないか――。」

この展開は、フィクションでありながら、現実の企業組織における「前経営陣と新経営陣の確執」を実に見事に暗喩しています。

承継とは「影響力のアーキテクチャ」を再設計すること

事業承継とは、単に代表者のポジションや財産、法的な権限を後継者に譲るだけの「手続き」ではありません。

  • 先代が持っていた見えない影響力
  • 強固な人的ネットワーク
  • 古参側近との歴史や感情的な関係性

これらすべてを含めて、トータルで整理・清算しなければ、真の「世代交代」は完了しないのです。

つまり、あらゆる代替わりにおいて、先代トップは「自分の地位を後継者に譲る」だけでなく、「自分と苦楽を共にしてきた古参側近をどう処遇し、どうソフトランディングさせるか」までを一体の戦略として設計しておく必要があります。

新旧の権力移行期に生じる歪みは、時として組織を崩壊に導くリスクを孕んでいます。承継とは、それほどまでにデリケートで、緻密なガバナンス戦略を求められる一大イベントなのです。

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