効率だけでは測れない価値

コラム

先日、SNS上で、ある士業の先生が「デジタル化やAIの進化によって郵便は減り、事務員やアソシエイトは不要になった。これからは徹底的に無駄を削ぎ落とした一人事務所が最強だ」という趣旨の発信をされているのを目にした。

確かに、テクノロジーを活用して業務を極限まで効率化することは、現代のビジネスにおいて大きな武器となる。実際、生成AIや各種デジタルツールの進化によって、これまで多くの時間と労力を要していた業務が驚くほど効率化されている。

私自身もその恩恵を大いに受けている。ホームページは自ら制作し、有料版の生成AIも積極的に活用している。現代においてITリテラシーを高めることの重要性は十分理解しているつもりだ。

しかし、その一方で、効率だけでは測れない価値もまた存在すると考えている。

例えば、手元に形として残り、相手への誠意や礼節を伝える郵便文化。あるいは、日々の業務を支えてくださる事務員の方々や、同じ目標に向かって切磋琢磨するアソシエイトとの間に育まれる信頼関係や仲間意識である。

これらは単なるコストや作業要員ではない。困難な局面を共に乗り越えるためのチームワークであり、専門家として歩み続けるための精神的な支えでもある。だからこそ私は、人と人とのつながりや情緒的な価値を大切にしたいと思っている。

効率や合理性を追求することは重要だ。しかし、それだけを唯一の価値基準としてしまうと、社会はどこか味気ないものになってしまうのではないだろうか。

また、技術の進歩に不安を感じる人や、デジタル機器の操作が得意ではない人たちが、肩身の狭い思いをせずに暮らせる社会であってほしいとも願っている。

大切なのは、新しい技術や仕組みを柔軟に取り入れる姿勢と、人を思いやる心を両立させることだと思う。

私が専門とする事業承継の現場でも、数字や制度だけで解決できる問題は決して多くない。創業者の想い、後継者の覚悟、従業員や取引先との信頼関係など、人の心に関わる要素が成否を大きく左右する。

だからこそ、合理性と人間味、効率と情緒、そのどちらか一方を選ぶのではなく、双方を尊重しながら歩んでいきたい。

変化の激しい時代だからこそ、実務家として、そして一人の人間として忘れたくないことがある。

それは、「思いやり」と「バランス感覚」である。

効率だけでは測れない価値を見失わずに、これからも歩み続けていきたいと思う。

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