専門家の世界において、ときどき「片手間感」を感じさせる光景を目にすることがある。
例えば、ある資格者が別の資格取得を目指して勉強を続けながら、現在の業務を行っているケースである。
もちろん、それ自体は決して悪いことではない。向上心を持ち、新たな挑戦をすることは尊いことであるし、自己研鑽は専門家にとって欠かせないものである。
しかし、気になるのは、その姿勢ではなく、それが依頼者からどのように見えるかという点である。
もし、その専門家が依頼者から重要な案件を任されている立場でありながら、SNSなどで「本業以外の目標」に多くの時間や関心を注いでいる様子を頻繁に発信していたらどうだろうか。
依頼者の中には、
「自分の案件にも十分に向き合ってくれているのだろうか」
と、不安を感じる人がいるかもしれない。
実際、多くの専門業務は依頼者の人生や財産、事業、家族に関わる重要なものである。
行政手続、許認可、相続――。
いずれも依頼者にとっては大切な課題であり、その解決を専門家に託しているのである。
だからこそ、専門家には実際の能力だけでなく、「真摯に向き合っているように見えること」も求められる。
もちろん、資格取得の勉強や自己研鑽を否定するつもりはない。
むしろ、知識や能力の向上は依頼者の利益にもつながる。
ただ、その発信の仕方によっては、意図せず「片手間で仕事をしている」という印象を与えてしまうことがある。
そして、その印象は専門家にとって大切な「信頼」を損なうリスクをはらんでいる。
専門家に必要なのは、資格や肩書きだけではない。
知識や実力はもちろんのこと、依頼者から安心して任せてもらえる信頼感が不可欠である。
資格取得への挑戦は素晴らしい。
しかし、その挑戦が依頼者に「片手間感」として映ってしまうのであれば、本来目指すべき専門家像から離れてしまうかもしれない。
専門家の価値は、保有資格の数だけで決まるものではない。
どれだけ依頼者と真摯に向き合い、どれだけ信頼を積み重ねられるか。
その姿勢こそが、真のプロフェッショナルを形づくるのではないだろうか。

