初期「仕置人」の「おどろおどろしい回」〜中村主水登場作2作目「暗闇仕留人」第10話「地獄にて候」〜

コラム

「仕置人」シリーズの歴史において、初期作品が放つダークで生々しい質感は格別であるが、その中でも群を抜いて陰惨かつ狂気に満ちた重厚な回として語り継がれているのが、『暗闇仕留人』第10話「地獄にて候」である。

狂気の悪党たちと「地獄彫り」の猟奇性

物語の軸となるのは、表向きは按摩でありながら目が見える悪党・玄沢と、狂気の刺青師・「地獄彫りの夢幻」による外道なシノギである。

・無差別な拉致と強制の刺青 何の落ち度もない町の若い娘を拉致し、背中に巨大な「地獄絵図」を力尽くで彫り込む。そのうえで、異常な嗜好を持つ男たちへ売り飛ばすという悪事が行われる。

・被害者たちの絶望 冒頭で登場する若い尼僧・春香尼は、彫られた苦痛と絶望から舌を噛み切って非業の死を遂げ、ある娘は正気を失って狂い笑う姿へと変わり果てる。

・職人の狂気「俺の地獄」 夢幻は単なる金目当てではなく、自らの芸術としての地獄絵に異常な執着を見せる。少しの狂いも許さず失敗作を自ら切り裂き、完成させた呉服商の娘・おそのの背中を見ては「これは俺のもんだ!」と叫ぶその姿は、本職の刺青師・劇画作家でもあった梵天太郎氏の怪演によって圧倒的なリアリティを放っている。

仕留人たちの怒りとやりきれなさ

おそのに密かな好意を寄せられていた糸井貢をはじめ、仕留人たちの怒りは頂点に達し、闇の制裁が下される。

・糸井貢 vs 玄沢:夜道での激しい立ち回りの末、三味線のバチが一閃し玄沢を切り裂く。 ・中村主水 vs 駕籠屋:情け容赦のない十手の一撃で叩きのめし、堀の水底へと沈める。 ・村雨大吉 vs 夢幻:大吉が胡桃を砕く音とともに迫り、夢幻の背中から直接心臓を掴み潰す。

必殺初期ならではの重苦しい余韻

悪党どもは悉く地獄へ送られたものの、背中に消えない刺青を刻まれ、父を失ったおそのの過酷な人生は続いていく。

悪人を仕留めてもなお被害者の背負った運命は残り、人間の業の深さと哀愁が胸に迫る。主水シリーズ初期特有の骨太でエッジの効いた闇と、ドラマとしての重厚な見応えが凝縮された一編である。

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