1970年代のソウル/R&Bシーンにおいて、聴く者の心を一瞬で掴んで放さない不朽の名盤が存在する。ジャズの名門Blue Noteから1975年にリリースされたマリーナ・ショウ(Marlena Shaw)の傑作『Who Is This Bitch, Anyway?』である。その記念すべきオープニングを飾るのが、今回紹介する「You Taught Me How to Speak in Love」(1974年録音)だ。
再生ボタンを押した瞬間に広がっていくのは、静けさの中に甘く溶け出すローズ・ピアノ(エレピ)のテンションコードである。そこに重なるデヴィッド・T・ウォーカーの優しく揺れるギターのオブリガートと、チャック・レイニー&ハーヴィー・メイソンによる極上のリズム・セクション。洗練された都会的なグルーヴの隙間を埋めるように、マリーナ・ショウの伸びやかで情感豊かな歌声が滑り込んでくる。
タイトルが示す通り「愛の言葉を教えてくれた」という甘美で切ない世界観を、ソウル、ジャズ、クロスオーバーの境界線をしなやかに飛び越えながら描き出した作品だ。単なるR&Bの枠にとどまらず、のちの90年代以降のR&Bやジャジー・ヒップホップ、チルアウト・ミュージックのサンプリング源としても深く愛され続けている。
時代を超えて色褪せないメロウな質感と、部屋の空気を一変させてしまうほどの贅沢な余韻。今夜は上質なグラスを傾けながら、この70年代ソウルの至高の1曲に耳を傾けてみてはいかがだろうか。

