テレビドラマ「ツイン・ピークス」〜シリアスなはずが滑稽さも醸し出すシャレオツさ(笑)〜

コラム

美しい自然に抱かれた、のどかな田舎町ツイン・ピークス。その静寂を切り裂くように、ビニールシートに包まれた美少女ローラ・パーマーの遺体が打ち上げられる――。

発端だけを見れば、息の詰まるような重苦しさと陰惨さに満ちた王道サスペンスそのものである。しかし、鬼才デイヴィッド・リンチ監督とマーク・フロストの手にかかると、このドラマは単なるミステリーの枠を軽々と飛び越え、奇妙でスタイリッシュなグルーヴを纏い始める。テレビシリーズは1990年から1991年にかけて全30回が放送され、1992年には映画化(『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』)された。この両者が相まって一大ブームを巻き起こし、日本でも社会現象と呼ぶべき熱狂を生み出したのである

人間の業、暴力、薬物、愛憎劇といったドロドロとした暗部が渦巻いているにもかかわらず、画面からは不思議と絶望感一辺倒の重苦しさが漂ってこない。その大きな要因となっているのが、シリアスな状況に差し挟まれる独特の「ユーモアとスタイリッシュさ」だ

象徴的なのが、主人公デイル・クーパー特別捜査官の佇まいである。切れ者で真面目なFBI捜査官でありながら、ダイナーに立ち寄っては「地獄のように熱く、闇のように黒い」コーヒーを愛おしそうに啜り、山盛りのドーナツを嬉々として平らげる。劇中、やたらコーヒーやスイーツが登場するが、これらは凄惨なストーリーを緩和するための工夫だろうか。真夜中に観るツイン・ピークスでの美味しそうなチェリー・パイはもはや食テロにさえ思えたのであった(笑)。

さらに、遺体を見て子どものように号泣してしまうアンディ警部補や、早口でマイペースな秘書ルーシー、釣りの途中で死体を発見して仰天するピートなど、周囲のキャラクターたちもどこかズレていて愛らしい。アンジェロ・バダラメンティのメロウで退廃的なジャズの旋律や、美しい自然美、ダイナーのレトロな内装と相まって、不条理な滑稽さが上質な「洒落気」へと昇華されていく。

もちろん、物語の核心であるミステリーの求心力も凄まじいものがあった。ローラ・パーマー殺害の真犯人は、ついに映画版で暴かれるが、悪霊めいた存在や超常現象は藪の中だ

悪夢のような恐怖とナンセンスな笑い、そして洗練されたアート感覚が同居する唯一無二の世界。シリアスに浸かりきらないその絶妙な匙加減こそが、今なお我々の心を捉えて離さない最大の魅力なのかもしれない

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