月潟典獄の最後の一太刀

コラム

――映画『北の螢』に見る古武士の矜持

五社英雄監督、仲代達矢主演の『北の螢』(1984年)終盤、私が最も心を揺さぶられる場面がある。石狩の開拓に人生を捧げた初代典獄・月潟典獄が、その職を解かれる場面だ。

月潟は囚人を酷使し、力による統治を行った男である。現代の価値観から見れば決して褒められた人物ではない。

しかし、彼は誰よりも過酷な北の大地に立ち続け、石狩平野の開拓という国家事業に命を懸けていた。

その月潟は、近代化を進める政府によって容赦なく切り捨てられる。国家のために尽くした男が、国家によって使い捨てにされるのである。

解任時、月潟は次期典獄と対峙する。その傍らには次期典獄の用心棒二人が控えていた。

少し前に刺客に遭い目が見えなくなって戦闘力の落ちた月潟に対して、次期典獄は強気になり罵声を浴びせる。

対する月潟は、「北海道開拓」の熱い思いをぶちまけて、次期典獄と政府要人の姿勢を痛烈に批判した。

怒った次期典獄は用心棒二人に月潟を叩き出すように命じた。

大柄な用心棒のほうが月潟に斬りかかるも、とっさにサーベルを手にした月潟に返り討ちに遭う。

もう一人の用心棒は月潟の迫力に圧倒されて、刀を途中まで抜いた状態でガタガタと震え上がる。

月潟は恐怖に怯えた次期典獄に向かってサーベルを投げる。サーベルは次期典獄の顔のすぐ横の壁に刺さった。次期典獄は怯えた顔で震えていた。

月潟は「まあ、長生きしんしゃい」と言い残して部屋を出た。

自分の矜持を貫いた月潟のその姿は、まるで古武士のようであった。

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