着物や羽織の世界には、「裏勝り(うらまさり)」という粋な美意識がある。
表から見える部分はあえて質素にまとめる一方で、羽織の裏に山水や鳥獣戯画などの模様が描かれている。
その華やかさは、人に見せるためではない。
自分だけが知る美であり、ふとした瞬間にだけ現れる奥ゆかしさである。
写真の装いも同じだ。
これは襦袢なので、ライトベージュの襟元しか見えないが、着物を脱ぐとこのように般若が描かれているのである。
これぞ裏勝りの美学である。
般若と聞くと恐ろしい鬼の面を思い浮かべるが、その本質は人間の嫉妬や執着、悲しみといった感情の象徴である。誰もが心の奥に抱えている感情を映し出した姿ともいえる。
人も企業も、本当の価値は表面だけではわからない。
肩書きや業績は表地であり、その人の信念や人格、企業理念や文化は裏地である。
見えない部分にこそ、その本質が宿る。
だからこそ、日本人は昔から表を飾るだけでなく、裏にこだわってきたのだろう。
表よりも裏に真価を宿す。
それが「裏勝りの美学」である。

