また観たいなぁ、あの『翔んだカップル』

コラム

ふとした拍子に、1980年の秋から翌春にかけて金曜の夜7時に放送されていた、あのテレビドラマ版『翔んだカップル』が無性に観たくなることがある。

世間一般で『翔んだカップル』といえば、薬師丸ひろ子と鶴見辰吾、そして相米慎二監督による長回しのアートな映画版を思い浮かべる人が多いのかもしれない。あれはあれで瑞々しく痛切な青春映画の金字塔だが、当時リアルタイムでテレビにかじりついていた僕たちの胸に深く刻まれているのは、なんといってもあのフジテレビのドラマ版だ。

何より眩しかったのは、山葉圭を演じた桂木文の愛らしさだった。原作の持つ少し大人びたコケティッシュさと、意地っ張りなショートカットの少女のピュアさ。彼女と田代勇介役の芦川誠が織りなす「ひとつ屋根の下」のぎこちない共同生活には、あの年代の少年が夢見るすべてが詰まっていた。

改めて振り返ると、芦川誠の顔立ちはどこかアンディ・ラウを思わせるような凛々しい二枚目でありながら、ドタバタ劇のなかで右往左往する愛嬌が見事だった。そこに、もじゃもじゃパーマと髭、巨漢の身体を揺らして豪快に割り込んでくる名物先輩・織田隼人役の轟二郎が加わり、あの清原和博を彷彿とさせる面構えでコミカルに空回りする先輩役の坂本あきらや、佐藤B作といった劇団東京ヴォードヴィルショーの面々、さらには若き日の柳沢慎吾までが画面の隅々で躍動する。あの圧倒的なコメディの密度と熱気は、いま見返しても贅沢というほかない。

ちなみに、このテレビドラマは制作当初、ミスで本編の尺が二分ほど短く出来上がってしまったという有名な逸話がある。苦肉の策としてその余ったラストの二分間に「NG集」を組み込んだのだが、それがかえって役者陣への親しみやすさを生み、番組全体のエンターテインメント性を一段と引き上げることになった。

番組の終わりにH₂Oの『僕等のダイアリー』が流れ出し、役者たちが素で吹き出し、照れ笑いするそのNGシーンを観ながら、「来週も絶対に観よう」と胸を躍らせた金曜日の夜。学校の重苦しい空気から解放され、週末へと駆け出していくあの瞬間の高揚感と、どこか切ない甘酸っぱさは、四十数年が経った今でも少しも色褪せていない。

残念ながら、権利関係や原版の事情もあってか、このドラマ版はDVD化もネット配信もされておらず、現在では観ることの叶わない「幻の作品」になってしまっている。

手に入らないからこそ、記憶の中の映像はますます鮮やかで、愛おしい。 もう一度だけでいいから、あの軽快なオープニングと、桂木文の屈託のない笑顔、そして底抜けに明るかったあの時代の空気に再会してみたいものである。

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