時代劇史上に残る名キャラクター・中村主水。その記念すべき原点となったのが、1973年4月21日放映の『必殺仕置人』第1話「いのちを売ってさらし首」である。
後のシリーズで見せる「昼行灯を装いながら、裏では冷徹に太刀を振るう完成された主水」とは異なり、この第1話の主水は、体制の腐敗や理不尽な現実に対して激しく葛藤し、青臭い正義への未練を抱えたひとりの男として描かれている。
「正しいことなんてねぇ、きれいなことなんかこの世の中にはねぇ。そう思いながら、心のどっかでそれを信じて、今まで十手を握ってきたんだ」
闇の御前の身代わり事件を機に吐き出されるこの台詞には、体制の犬として生きる同心の絶望と、それでも捨てきれなかった正義への執着が生々しく宿っている。
仕置を決意した後の主水、念仏の鉄、棺桶の錠のやりとりも秀逸である。怒りを滾らせる錠に対し、主水は「向こうがワルなら、俺たちはその上をいくワルにならなきゃならねぇ。俺たちゃワルよ、ワルで無頼よ」と言い放つ。正義の味方であることを自ら否定し、社会の暗がりで生きるアウトローとしての覚悟を突きつける場面は、初期必殺のハードボイルドな世界観そのものである。
そして迎える結末。被害者の娘が身を売って作った金を受け取ることに躊躇する錠に対し、鉄は「世のため人のためなんて言ってたら、すぐへたばっちまう」と冷徹に告げ、金をつかみ取ることを迫る。金で結ばれる共犯関係を受け入れた瞬間、アマチュアの枠を超えた最強の殺し屋集団「仕置人」が誕生した。
骨太なドラマ性、鋭利なセリフ回し、そして鉄の骨外しに代表されるレントゲン演出の幕開けなど、シリーズの礎を築いた不朽の第1話である。

