先日、令和8年度の司法書士試験が実施された。
受験された皆様、本当にお疲れ様でした。
筆記試験終了後は、口述試験への準備を進める方もいれば、合格発表を待つ方もいるでしょう。そして、いわゆる司法書士試験合格見込み者の中には、次なる挑戦として11月の行政書士試験を視野に入れている方も少なくありません。
実際、司法書士試験と行政書士試験は出題範囲に重なる部分が多くあります。
特に民法と会社法については、司法書士試験レベルまで学習していれば、行政書士試験では大きなアドバンテージとなります。さらに、行政法を徹底的に勉強し、民法・会社法の知識の定着があるうちに受験すれば、統計的に合格しやすいようだと言われています。
しかし、それは決して「簡単に受かる」という意味ではありません。
行政書士試験を甘く見たり、油断すると不合格になることは十分にあり得ます。
その理由の一つは、試験の性格の違いです。
膨大な知識を詰め込む司法書士試験と違い、行政書士試験は現場思考の問題が多いという特徴があります。
条文や判例を暗記しているだけでは対応しきれず、具体的な行政実務を意識した事例処理能力や、多肢選択・記述式への対応力が求められます。
また、行政書士試験には基礎知識(旧一般教養)という出題分野があり、足切りの怖さもあることを忘れてはいけません。
法律科目で高得点を取っても、基礎知識の基準点に届かなければ不合格となります。この点は司法書士試験にはない特徴であり、多くの受験生が最後まで気を抜けない理由の一つです。
一方で、もし司法書士試験合格後に行政書士試験を受験するのであれば、できるだけ早いタイミングをおすすめします。
というのも、司法書士実務が始まってからはなかなか行政書士試験に合格しにくくなるからです。
開業や勤務が始まると、登記実務や顧客対応、研修などに追われ、受験勉強の時間を確保することは想像以上に難しくなります。せっかく蓄積した法律知識も、行政法を中心とした行政書士試験向けの知識は時間の経過とともに薄れてしまいます。
そして、行政書士資格を取得する意義は、単に資格を増やすことだけではありません。
司法書士資格だけだと、許認可や入管業務や行政機関への申請書類提出ができないため、行政書士資格を併せて取得することで、依頼者に提供できるサービスの幅は大きく広がります。
会社設立から各種営業許可、外国人の在留資格手続、事業承継に伴う行政手続まで、一貫したサポートが可能となり、士業としての付加価値も高まります。
司法書士試験を乗り越えた努力は、決して行政書士試験でも無駄にはなりません。
しかし、その努力を結果につなげるためには、行政法対策と基礎知識対策を怠らず、「司法書士試験とは別の試験である」という認識を持つことが何より重要です。
司法書士試験の勢いが残っている今だからこそ、その知識を行政書士試験へとつなげる絶好のタイミングなのかもしれません。

