行政書士試験に合格すると、「行政書士になったら、何を専門業務にしようか」と考えがちである。
相続・遺言、建設業許可、入管、農地転用、開発許可、風営法――。
もちろん、こうした行政書士業務の中から専門分野を選ぶ方法もある。
しかし私は、少し違う考え方をしている。
行政書士資格そのものをエンジンにする必要はない。
自分がこれまで身につけてきた知識、経験、技術こそが「エンジン」であり、行政書士資格は、その能力をさらに加速させる「ブースター」として使えばよいのではないか。
私は現在、事業承継士®として事業承継に取り組み、後継者育成についても学んできた。
これは一つの「エンジン」である。
そして、もう一つ身につけようとしているのがCADである。
一見すると、事業承継とCADには何の関係もないように見える。
しかし、行政書士というブースターを装着すると景色が変わる。
「事業承継士 × 行政書士」であれば、経営・承継の問題と行政法務をつなげることができる。
「CAD × 行政書士」であれば、開発許可、農地転用、風俗営業許可、旅館業など、図面を伴う許認可業務へ応用できる。
例えば、平面図や配置図、求積図などをCADで作成・修正できれば、単に申請書類を書く行政書士とは違ったソリューションを提供できるであろう。
行政書士は建築士でも測量士でもない。
当然、それぞれの資格者にしかできない業務は、その専門家にお願いすべきである。
しかし、建築士、測量士、土地家屋調査士、司法書士、税理士、弁護士などと連携しながら、行政手続の専門家として案件全体を前へ進めることはできる。
その際、自分自身が図面を理解し、CADを扱えれば、専門家同士のコミュニケーションにも大きな違いが生まれるはずである。
また、相続の相談が単なる相続手続で終わるとも限らない。
話を聞いてみると、相続財産の中に自社株式があったり、先代名義の事業用不動産があったり、後継者問題が隠れていたりすることがある。
そこで事業承継の知識が「エンジン」として働くのである。
逆に、事業承継の相談から相続・遺言などの行政書士業務につながることもあるであろう。
だから私は、行政書士になった瞬間、それまでの自分をいったんリセットして「行政書士として何をしよう」と考える必要はないと思っている。
むしろ、
「自分はこれまで何を身につけてきたのか」
を棚卸しする。
そして、
「そこへ行政書士資格を掛け合わせると、何ができるのか」
を考える。
この順番の方が面白いのである。
行政書士資格は、それ単独でも価値のある国家資格である。
しかし、それまで培ってきた専門性や技術と掛け合わせることで、さらに大きな力を発揮する可能性がある。
私の場合であれば、
事業承継士® + CADスキル = エンジン
そして、
行政書士資格 = ブースター
である。
エンジンが強ければ強いほど、ブースターを点火したときの加速も大きくなる。
だから行政書士登録までにやるべきことは、行政書士業務のメニューを眺めることだけではない。
自分自身のエンジンを鍛えることである。
行政書士資格を「肩書」にするのではなく、自分が培ってきた能力を社会で実装するためのブースターとして使う。
そんな行政書士のあり方があってもよいのではないだろうか。
エンジンは、自分自身。
行政書士資格は、その可能性を加速させるブースターである。

