ふとした瞬間に、「あの番組、すごく好きだったな」と思い出すテレビ番組はないだろうか。
私にとってその筆頭と言えるのが、かつてBS日テレや旅チャンネルで放送されていた『大人のヨーロッパ街歩き』である。
一般的な旅番組というと、有名な観光名所や定番のグルメスポットを駆け足で巡るイメージが強いかもしれない。しかし、この番組の魅力は全く異なるアプローチにあった。
最大の特徴は、「現地に暮らす日本人」が街の案内人となることだ。
ガイドブックの表紙を飾るような場所だけでなく、地元の人しか知らない裏路地の隠れたカフェ、手作りの温もりあふれるセレクトショップ、生活感ただよう鮮やかなマルシェ(市場)など、案内人の日々の暮らしの延長線上にあるようなスポットへ、ゆったりと連れて行ってくれるのである。
中でも、フリーアナウンサーの伊藤聡子氏がナビゲーターを務めていた回は、とりわけ印象に残っている。
伊藤氏の持つ知性と品格、そして言葉選びの丁寧さ。それでいて、魅力的な街並みや美味しいワインを前にした時に魅せる、パッと華やぐリアクションのギャップがとても魅力的であった。はしゃぎすぎず、けれど心の底からその場所を楽しんでいる空気感が、画面越しにも心地よく伝わってきたものである。
「もし自分がこの街に暮らしていたら、どんな朝を迎えて、どんな路地を歩くだろうか。」
そんな想像を膨らませながら観る時間は、まさに“暮らすように旅する”贅沢なひとときであった。
残念ながら番組の新規制作は終了してしまったが、番組がまとっていたあの穏やかで上質な空気感は、今でも心の中に心地よい余韻として残っている。
慌ただしい日常から少し離れて、上質な時間に浸る。大人になった今だからこそ、あのような番組の良さがより深く心に沁みるのかもしれない。
みなさんには、今でも心に残っている大好きな番組や、旅の思い出があるだろうか。

